液化ガス利用の手引き

1. 一般的な注意

 近年、液体窒素と液体ヘリウムの学内需要量が大幅に増加し、利用者数もそれに伴って多数となって来ている。このような状況下で、低温室を通じての液化ガスの利用に関して、その利用技術と取り扱い上の意識を高めて、学内において安全で快適な利用がなされることを目的としてこの手引き書を作成した。低温室利用や液化ガスの取り扱いに際しては、以下に従って利用するものとする。

 液化ガスの利用者は、低温室の行う保安教育講習会に参加し、所定の安全知識と操作技術を習得したと認められた者に限る。万一、安全管理上または操作上のトラブル等が生じた場合には、速やかに低温室職員に報告し、指示を受けることとする。

 

2. 液化ガス等の取り扱い上の注意

 利用者は、以下の低温液化ガスの取り扱い上の注意事項を念頭において作業を行う。

  1. 極低温のために凍傷を起こすので、低温液化ガスや低温になった金属部分に直接手を触れてはならない。取り扱いには革製手袋を用い、時には、保護眼鏡、保護面などを着用する。
  2. 低温になる部分の配管には、銅、アルミニュウム合金、又はステンレス鋼のような低温ぜい性を起こさない材料を用いる。
  3. 普通鋼などの材料は低温ぜい性などにより破壊され易くなり、二次災害の原因となるので、液化ガスをこれらの上にこぼさないようにする。
  4. 凝相爆発を起こすことがある。液体水素ー固体酸素、液体酸素ー油脂、または炭化水素燃料などの混入を避ける。
  5. 液化ガスは気化すると650〜900倍の体積になるので、使用場所の空気を置換する。気体によっては、窒息の危険があるので換気には十分注意する。
  6. 過剰の熱により爆発的に気化するので万一の時の逃げ場を確保しておく。
  7. 液化ガスを密閉容器に入れてはならない。必ず気化ガスの逃げ口を作る。また、安全弁や排ガスベントが設けてある場合にも、それらの末端に空気中の水分や炭酸ガスが凍結凝固して詰まっている場合があるので、これらが正常に機能することを日常よく点検する。
  8. 液化ガス容器は、静かに丁寧に扱い、日光の直射しない風通しの良い水平な場所に置く。
  9. 液化ガス容器は構造上強度を取れないので、実験室内での移動以外の運搬には専用の運搬車を用いる。

 液体窒素の液取り作業においては、次の液体窒素の取り扱い上の注意事項を遵守する。

  1. 液体窒素を寒剤として使用した場合、空気中の酸素が液化する。液体酸素は非常に危険であるので、トラップなどを開放系のまま液体窒素の中に長く放置してはならない。
  2. 開放型容器は必ずふたをする。密閉型容器では昇圧弁、液とりだし弁を閉じ、ガス放出弁を開いておく。
  3. 長時間使用した液体窒素や蒸発して少なくなった液体窒素は、酸素が濃縮されているので、有機物の冷却に用いてはならない。
  4. 液体窒素貯蔵容器は頸部が弱いので、横に倒してはならない。また、衝撃にも弱いのでていねいに扱う。
  5. 窒素は毒性は無いが窒息性があるので、換気の良い部屋で取り扱う。決して密閉された部屋で取り扱ってはならない。
  6. 容器は金属製の液体窒素専用のものを用いる。
  7. 密閉型容器への充填は液面計や検液弁などで確認し、内容積の90%を越えないようにする。
  8. フレキシブルホースがはねてガラス製のジュワー瓶を破損することがあるので、ジュワー瓶へフレキシブルホースから直接液取りしてはいけない。ガラス製の容器への液取りは、金属製の液体窒素容器から汲む。
  9. ガラス製のジュワー瓶の外側には破損したときガラス飛散するのを防止するためテープを卷付けておく。
  10. ガラス製のジュワー瓶の縁は歪みが大きく冷却で破損しやすいので、液体窒素をかけてはいけない。

3. トラブル対策

3.1 低温により容器が閉塞した場合の処置

 液体窒素冷却の容器では、液体窒素導入管の水分などによる凍結が生じる。これは窒素導入管が開放になっていた場合に生じる。普段の点検で窒素導入管が開放となっていないこととブンゼンバルブが正常に機能することを確認する。万一、この事故が生じた場合には、窒素導入管に細いステンレス管などを使って乾燥した窒素ガスを流し凍結を溶かしだす。

 液体ヘリウム溜につながる配管が開放になっている場合には、空気などが凍結して管を閉塞することがある。この場合には、同様にしてヘリウムガスを流して溶かしだす。閉塞されなくてもヘリウム溜の底に固体空気や氷などが溜まり、トランスファーチューブを閉塞させることがある。場合によっては、容器を室温に戻して乾燥窒素で水分を取り除かなくてはならない。

3.2 緊急時の措置

(1) 密閉型容器の圧力異常となった時

 放出弁を開けて圧力を下げる。なお、室内での放出は避ける。

(2) 液体窒素、ヘリウムの大量の漏洩の場合

 室内の時は、窓や扉を開けて換気をよくする。

4. 液体窒素の液取り

 液体窒素の液取りは、すべて利用者が行うものとする。これらの利用者は、低温室の行う保安教育講習会に参加し、液体窒素取り扱いの認定を受けた者を前提としている。

LN2 自動供給装置

 

4.1 自動供給できない容器

5L以下の小型容器及びガラス製容器

備え付けの10L容器(小型容器供給用)から汲み出してください。この容器が空となった場合は以下の液取りの手順にしたがって供給した後汲み出しをする。この場合には従来通り伝票を出してください。

未登録の容器

容器の登録は容器を持参して登録を受けてください。連絡先は緊急時の連絡先に同じ

4.2 液取りの手順

  1. 取っ手を握って扉を開ける

    タッチパネル表示器が消えているなら表示ボタンを押す


    以後の入力はタッチパネルで行う(他のボタンは押さないように)

  2. 容器にすでに液体窒素が入っていて冷えているが、配管が冷えていない場合

    大型容器では向かって左側の液取り配管の手動バルブを少し開けて配管を冷却する。小型(リフトを使用できる容器)は後で行う。

  3. 容器を台秤に載せる

    用具箱から中間 O-リングをとりだし、スイングクランプで延長管を配管に取り付ける

    リフトにはテープで約10センチごとに印を付けてあります。リフトをあげすぎて延長管が底に突き当たることの無いよう十分注意して下さい。リフトを下げるにはレバーを握ってください。充填開始以後は台秤に乗ったり容器に力を加えたりしないでください。重さを計測して判断しているので停止するのみならず正しい液量が得られません。

  4. 充填条件をタッチして容器のバーコードを読込む
  5. 充填状況をタッチする

    設定値 : 充填できる最大液量  L

    実充填量: 充填量現在値    0L

    設定値が正常であることを確認する。設定値が異常なときはきちんと容器が台秤に乗っているかに注意して再度バーコードを読み込んでください

  6. 小型容器ですでに液体窒素が入っていて冷えているが、配管が冷えていない場合 延長管を容器に差し込まない状態で開始をタッチする。

    配管が冷えたら一時停止をタッチし、延長管を容器に差し込む(リフトを上げる)。継続をタッチして充填を開始する。

    その他の場合 開始をタッチすれば充填が開始する

    容器が冷えていないなど90秒経過しても液量が規定量増加しないときには自動停止するので再度4.から繰り返す

    必要量となったら一時停止をタッチする(設定値を越えると自動停止する)

    いずれの場合も停止となったときは10秒間ブザーが鳴り、、継続か終了のタッチ待ちとなるので再充填が必要なら継続を、終了したい場合は終了をタッチする。

    前回量と表示されている液量が充填量です、メモを取っておいてください。値が異常のときにはすぐ係員へ連絡してください

  7. 引き続いて別の容器に充填する場合

    リフトを下げて容器の入れ替えができるなら入れ替えて4.へ行く

  8. 革手袋をして延長管を外す(必要ならブロワーで配管を暖める)

    中間 O-リングと延長管を落とさないように十分注意してください

    必ず革手袋をして取り扱うようにしてください

  9. 引き続いて供給する場合には今使用したとは別の暖まっている中間 O-リングを使用して3.へ行く(高さの目安をしておくこと)
  10. 扉を閉めて終了する(電源は切ってはいけません)

    タッチパネルはしばらくすると自動で OFF になる

(注意事項)

バーコードの読み込みがすぐできない場合はその旨申し出て下さい。修正します。(初期のバーコードは読み込みに苦労したので変更しました)

5.で設定値が異常な場合特に値が負となっている場合はリフトが秤に正しく載っていないと思われます。位置を修正して再度バーコードを読んで下さい。

終了は必ず終了をタッチしてから、7.以降に進んで下さい。

バルブからの液漏れを見つけたら直ちに液取りを中止し、低温室職員に状況を報告し、適切な処置をしてもらってから、液取りを再開する。その他分からないこと、異常な動作を察知したなど問題が生じたときも下記に連絡してください。

 

緊急時の連絡先

東6号館113室 センター教員研究室1   成澤 内線 5731
 
東6号館121室 ヘリウム液化室      島  内線 5731